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持続可能な周産期医療体制の構築に向けて

出典: 東京ぺディア

  • 作成: 鈴木寛事務所
  • 作成日:2009年6月


目次

相次ぐ周産期救急搬送収容不能事案

 2006年8月に奈良県で分娩中に意識を失った妊婦が速やかな受入がなされず、搬送先の大阪府の病院で亡くなった事件は記憶に新しいところです。また、2008年秋にも周産期救急搬送収容不能事案が続発しました。
 なぜ、そのようなことが起きるのでしょうか? その原因の一つを2008年12月8日に厚生労働省雇用均等・児童家庭母子保健課が出した「周産期医療ネットワークに関する実態調査の結果について」から窺い知ることができます。
 その資料によれば、新生児科の当直体制は、医師1人の施設が60センターで、医師2人以上の施設が15センターだったのです。また、産科の当直体制は、医師1人が43センターで、医師2人以上が32センターでした。
 十分に人がいなければ、救急搬送を受けることは難しいのです。医療計画の策定者である都道府県および厚生労働省は、上記のような現状に鑑み、医療現場に過度な負担を強いない形で複数医療機関による連携なども含め、1人当直体制の速やかな改善に努めるべきではないでしょうか?

周産期救急妊婦の受け入れまでの時間

 周産期救急妊婦の受入までの時間は、地域によって大きく異なります。受入までの時間には、受入先決定までの現場滞在時間と、受入先が決まって実際に現場から医療機関まで搬送する時間が含まれますが、東京都、横浜市、川崎市をはじめとする大都市においては、「現場滞在時間が30分を超えるケース」が減少していない都市もあります。さらには、「現場滞在時間が60分を超えるケース」も100件以上あり、その結果として、妊婦死亡、重体事案が発生し、そのことが社会問題化しています。一方、地方においては、受入機関は速やかに決まっても、現場近くに高度な周産期医療機関が存在しなければ、搬送時間は長くなってしまうため、現在、縮小・閉鎖の危機にある各医療圏における高度な周産期医療機関の存続・拡充が喫緊の課題となっています。

ファイル:Shusanki03.jpg


周産期医療の再建のために

 大都市圏であれ、地方であれ、周産期医療再建の鍵は、ハイリスク妊婦およびハイリスク新生児を扱う医療機関におけるNICU(Neonatal Intensive Care Unit, 新生児特定集中治療室)の拡充と専門医師の確保です。
 現在のNICUの必要数は、周産期医療体制整備事業開始に際して、厚生省心身障害研究(ハイリスク児の総合的ケアシステムに関する研究)が1994年に推計した、2.1床/1000出生をそのまま採用しています。そして、NICUの数は、2005年現在で2032床(1.9床/1000出生)(診療報酬届出ベース)となっていますが、現状に即したNICUの必要病床数の算定については、2008年3月に出された『NICUの必要病床数の算定に関する研究 平成19年度総括・分担研究報告書』に詳しくかかれています。
 当報告書は、高齢出産や不妊治療による多胎妊娠の影響によって基準設定された1994年から2005年までの約10年間の変化を以下のように記しています。

  1. 低体重児出生数は1994年が88362人(出生数全体の7.1%)で、2005年が101272人(出生数全体の9.5%)だった低出生体重児出生数が約30%増加。
  2. 新生児死亡率が1994年2889人(出生1000対2.3人)、2005年1510人(出生1000対1.4人)と、40%改善。

 以上により、NICU に対する需要が増加していることを指摘し、①全国で年間約3万6000例がNICUにおいて治療が必要とされていること、②NICUに3ヶ月以上入院している割合は18.3%となっており、NICUにおける長期入院症例の占有率は3.85%を占めること、③緊急入院のための空床の待機病床が、NICUの8.1%を占めていることなどから、現行のNICU必要病床数2.1床/1000出生から約3床/1000出生に目標基準を変更すべきであると提言しています。こうしたことを鑑みたNICUの必要数は約3000床であり、医療現場に過度な負担をかけることなく、十分な予算措置とインセンティブベースで現行から約1000床増加させることが必要です。

 以上、周産期医療について、見てきましたが、周産期医療に限らず、政策を実行するにおいて必要なことは、具体的なデータに基づき、現場に十分に配慮しながら、持続可能な体制を構築することに尽きます。

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